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劉 穎 教授「中国語(上級)」「中国語選択(上級)b」

語学にとどまらず中国の社会問題を学べる授業

劉 穎 教授「語学にとどまらず中国の社会問題を学べる授業」

教員基本情報

氏 名 :劉 穎(りゅう えい)

所 属 :文芸学部

職 名 :教授

専門分野:中国地域文化?民俗文化?民間文学、中国語教育

授業概要

対象者 :全学部1~4年生

授業形態:語学

実施学期:2021年度後期

履修者数:9 名

※ページ内のpoint!は授業のポイントです
※黄色にハイライトされた用語はクリックで用語説明が表示されます

劉先生の授業は、2020年度後期の「授業改善アンケート」において、全体平均が5点満点中の4.34点と学生から高く評価されている。また、劉先生は2020年度の「ベストティーチャー賞」に選出されており、当該授業は中国の社会問題に触れながらディスカッションができるまでの語学力を身に付けられる、学生が主体的に学べる授業となっている。

授業内容?目的と取材当日の授業について

劉 穎(りゅう えい)/「中国語(上級)」、「中国語選択(上級)b」

 本授業は、文芸学部の学部共通外国語「中国語(上級)」として開設されているが、全学共通教育科目外国語科目「中国語選択(上級)」としても合同開講され、他学部にも開放されている科目である。
 中国語のエッセイや新聞記事などの文章を通し、中国の社会問題に触れることで初級と中級までに学んだ基礎表現と基礎語彙を復習しながら、広い範囲での語彙と口頭表現を学び、日常会話はもちろんのこと、一般的な話題についてディスカッションができるようになることを目標とする。

取材当日(2021年11月10日)の授業は、以下の流れで進められた。

授業の流れ

①前回授業までの振り返り(5分)
②宿題の長文プリントを全員で音読(15分)
③プリント音読による発音テスト(30分)
④先生からの質問コーナー(20分)
⑤学生からの感想コーナー(20分)

※④⑤は学生の中国語での発言をメインとして行われる

 取材当日は、先週まで学んだ長文(今回は中国の教育を取り上げた記事)の発音テストが行われた。テストについては事前に学生に告知をし、テスト本番に入る前に全員で長文のシャドーイング練習をした。


 テスト本番では、学生に長文を順番に音読させ、音読後に先生が発音を指摘していく形で行われた。フィードバッグを丁寧に行い、意味が伝わりやすい長文のイントネーションを身につけ、発音に加え、語彙、文章の大意について同時に理解を深められる流れとなっている。
 つぎに、長文を元に先生から学生ひとりひとりに中国語で質問が投げかけられ、それに中国語で回答することが求められた。回答が出てこない場合、先生からは、長文の通りの言い方ではなく、日本語で答えのヒントを与え、「同じような意味の中国語の言葉で自分の知っている単語はない?」などと既習した中国語を思い起こすように促し、コミュニケーションのスキルを上げるように指導した。
 長文の内容への理解を深めた後に、今回のテーマを通して感じた事を、長文等の資料を見ずに発表させ、自分の中にある中国語を使用し伝えることが促された。
 先生は授業の中で、「外国語をネイティブと同じように流暢に早く話す必要はなく、最優先すべきは『自分が何を伝えたいか』であること、難しく言おうとするのではなく自分が知っている言葉を使って伝えることが大切である」と繰り返した。
 授業の最後に先生は「中国人は『只有想不到的、没有做不到的(予想外のことはあるのだが、不可能なことはあるはずがない)』という教育を受けている。せっかく中国語を学んだのだから、こういった中国人のポジティブな考え方も学んでほしい」というメッセージを送った。

教員インタビュー(Q&A)

Q.授業のポイントを教えてください。

A. 中国語は漢字であることから、日本人にとってなじみやすい言語かもしれません。「文を黙読する」「翻訳する」という学習のみの場合、抵抗が少ないと思います。しかし、その中国語も発音をすると途端に外国語になります。逆に、漢字に対する日本語の発音が中国語の発音を覚える際に邪魔をしてしまう事もあります。そこで、漢字に頼った学習ではなく、発音とリスニングを中心に授業を進めることで、外国語としての中国語を認識させています。
 中国語を通して中国の経済、教育、結婚などの社会問題と社会背景や?中国人の信仰などを理解しながら、中国人がどういう考え方をするか、日本人とは違った考えを持った中国人とコミュニケーションが取れるように、実用的に中国語を使用する際に必要なポイントを学習する形で授業を進めています。

Q. 授業での学生との関わり方について教えてください。

A. 授業ではとにかくどんどん自分の言葉で発言させます。語学は何年も学習を積んでから話すものだとか、難しい話は難しい言葉や知識を知らないとできないものだとかいう考えを払拭し、コミュニケーションに対する恐怖心をなくす指導をしています。私の事は、ひとりの中国人の友達のように感じてもらい、授業90 分の中では異国に来た雰囲気を作り出すように心がけています。
 発音のポイントについては、個別で質問を受け付けています。教員の発音を直に確認するために授業後に直接質問に来る学生もいますし、メールで質問してくる学生もいます。
 また、中国人への対応相談も多いです。学生はアルバイト先で中国人と一緒に働く機会も増えており、よくあるのが、中国人の口調が怒っているように感じる、という相談です。「中国人は不慣れな日本語で相手を納得させようと必死に伝えようとするので、言葉もストレートになります。あなたもストレートにぶつけてしまって大丈夫。遠回しに言うとかえって誤解を招く」とアドバイスをしています。このような実生活でのやり取りこそが、異文化交流だと学生に意識させています。

Q. 学生への期待を教えてください。

A. 外国語でコミュニケーションするには、大量の単語を覚えたり、完璧な作文を作ったりする必要はなく、考えていることを知っている言葉と短い文で大胆に話す事が大切です。授業内では常に「異文化の視点」を意識してほしいと思っています。自分の国での常識は他の国の常識ではない事が多くある、それをストレスに感じるのではなく違いを楽しんで異文化交流をしていってほしいです。そうすると、国際交流はもっと楽しくなりますし、「良い」「悪い」の判断よりも多角的な視点から物事を考えることができます。また、その視点を更に広げるために、留学でも旅行でもどんな形でもいいので、実際に中国に見に来てほしいとも思います。
 日中経済関係がますます進む中、学生たちは将来、直接的?間接的にでも中国に関連する仕事に就く可能性が高いと思います。中国人に自分の考えを伝えたいときは、中国人のように「完璧で流暢な」中国語を使う事を考えずに、ゆっくりと、自分の持っている言葉を最大限に生かして、時には身振り手振りも交えて伝えればほとんど通じ合うものだと自信をもっください!

学生インタビュー(Q&A)

Q. この授業を履修したきっかけは何ですか?

A. 小学校入学前まで中国で生活していました。中国の社会事情にも興味があったので履修しました。

A. 中国語は中級を履修し興味を持ちました。上級は難しいかと思いましたが、今4年生で、最後の大学の授業ということで、チャレンジの意味も込めて履修しました。

A. 自分は英文学科なのですが、同じ学科では中国語を第二外国語で履修する人が多いです。今後の就職を見据えて、職種?業種が広がるかと思い履修しました。

Q. 印象に残っている授業はありますか?


A. 中国の教育事情に関わるテレビ番組の録画を見たことが印象に残っています。学歴による社会格差や、一人っ子政策からくる親からの大きな期待の中、ものすごく勉強しなくてはいけない中国の子どもたちを見て衝撃を受けました。もし自分がその立場に立ったら嫌だなぁと思いましたが、その社会の中で生活し、さらに親であったならどうか?と先生から聞かれたときに、子どもに沢山勉強することを強要するだろうなと思いました。社会背景や立場が違ってくると考え方も変わるのかもしれないと思いました。

Q. この授業のよいところはどんなところですか?

A. 先生が親しみやすく、発音の指摘が的確でわかりやすいです!個々のレベルに合わせ、一人一人に発言を促してくれます。

A. 中国の文化や歴史からくる中国人の思想を織り交ぜて言葉の意味を理解できるので、単語をただ暗記するだけではない覚え方ができます。

A. 題材が、中国の新聞のニュースや社会問題、男女の交際においての考え方のエッセイなどで、中国全体を知ることができます。普通の語学の授業とは全く違う、生きた授業だと思います!

Q. 先生へのメッセージをお願いします!

A. 毎回の先生のファッションが楽しみです!(※取材当日の授業中に、チャイナドレスの特徴である両サイトのスリットは、騎馬民族満州族の民族衣装が元だったので、馬に乗るときに便利なだけという話もあり、ひとつの話題から先生のお話はどんどん進んでいきます)

A. 1年生でも楽しく理解できました!先生が今年度でご退任なのが残念です。同級生に来年度の履修をすすめたかったです。

※インタビューは5名の学生にご協力いただきました。